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「数年ぶりに、心から『集中』できた」。全国を異動する吉弘拓生さんがリトリートを通じて感じた変化

今回インタビューした吉弘 拓生(よしひろ たくお)さんは、自らのことを全国を“異動”する公務員と名乗ります。

そのキャッチフレーズの通り吉弘さんは、一般財団法人地域活性化センター職員、内閣府企業版ふるさと納税マッチングアドバイザー、内閣官房 地域活性化伝道師などさまざまな肩書を持ち、全国各地を飛び回りながら働いています。

全国から集まる公務員の皆さんに向けて、ウェルビーイングについて伝えていくのも吉弘さんの仕事のひとつ。ところが、吉弘さん自身が日常に追われ、自分のウェルビーイングをおざなりにしてしまいそうになることもあったと言います。

今回は、そんな吉弘さんがリトリートでの体験を通して感じた変化について伺いました。

 

吉弘 拓生(よしひろ たくお)

1981年、福岡市生まれ。一般財団法人地域活性化センターの新事業企画室長。福岡県うきは市の市長公室付事務主査、群馬県下仁田町の副町長などを歴任。主な取り組みに、森林セラピー推進事業、JR九州「ななつ星in九州」歓迎事業、企業版ふるさと納税「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金」など。全国各地で公演活動を行うなど、精力的に活動を行っている。



「沖縄の隠れた魅力を見つけられた」

 

 —吉弘さんがリトリートに参加したきっかけを教えてください。


 プログラムの主催者である矢澤祐史さんに誘われたのが参加のきっかけでした。実はリトリートでの取り組みの詳細は聞いていなかったのですが、プログラムのひとつとして馬との触れ合いができると聞いていて、それが気になったんですよね。幼いころから本物の馬を見る機会がなかったこともあり、「馬がいるの?楽しそう!」と、軽い気持ちで参加を決めました(笑)。


—2日間のプログラムに参加されたと伺っています。どのようなことをされたのでしょうか?


 1日目は、海辺を散策するところからスタートしました。僕は全国を飛び回っているので沖縄で仕事をすることもあるのですが、どういうわけか行くのは山の方ばかりで(笑)。育った場所も働いてきた場所も山の近くだったので、海岸という場所そのものが新鮮でした。着いてすぐに沖縄の海の美しさに圧倒されて、「うわー!沖縄に来たんだー!」と心が躍ったのを覚えています。

 そのあとは、南城市の魅力的な場所を案内してもらいました。沖縄と聞くと、海、オーシャンブルーを見渡せる橋、緑豊かな公園などをイメージされる方も多いかもしれません。ですが、今回のリトリートでは、ただ観光地を巡るだけのツアーでは出会えないような素晴らしい景色を見せてもらいました。

 「こんなところがあるんだ!」「こんな体験ができるんだ!」とたくさんの感動があったのが1日目です。

 

—旅行会社の定番ツアーでは見られないような景色を見ることができたのですね。2日目は何をしたのですか?


 2日目は、ホースセラピーのプログラムをメインに取り組みました。野生に近い状態の馬と心を通わせて近くに寄っていく。それができたら、手綱を引いて一緒に海辺を歩いたり、じゃれあったりする。新鮮な体験ばかりでしたね。

 



「リトリートは、日常から離れ一つのことに全力で向き合える場所」

 

—ホースセラピーの内容について、詳しく教えてください。


 到着する前は、ホースセラピーの中で馬に乗れることを楽しみにしていました。ですが着いたら、僕は馬には乗れないということがわかって……。

 

—それはなぜですか?


 ホースセラピーのプログラムの内容は、人によって違っていました。ある人は最初から馬に乗って、ある人は海辺で馬を引いて、ある人は馬に近づくことだけを目指す。プログラムを組んでくれる先生が、参加者一人ひとりの体調や醸し出す雰囲気などから、個別の取り組みを決めてくれました。結果として、僕は「馬に乗らないプログラムにトライします」と。

 ちょっと残念な気持ちももちろんあったのですが、一人ひとりに合わせたプログラムが提供されることが純粋に興味深く、先生が言うならやってみよう、とまずは馬と心を通わせて仲良くなるプログラムにトライしました。


—印象的だった出来事はありますか?


 特に印象的だったのは、プログラム中に飛行機の音が聞こえなかったことでしたね。

 

 —飛行機の音?


 そうですね。実は僕、飛行機が大好きで(笑)。沖縄という土地柄、1時間に何度も、頭の上を飛行機が通っていくんです。最初のころは、そのたびに「これはボーイング737だ!」なんてことを考えていました。

 でも、ホースセラピーのプログラムが終わったときにふと気づいたんです。馬と触れ合っている3時間、飛行機の音が1度も聞こえなかったな、と。

 日常生活の中で、何かひとつの物事にこんなに集中することはあまりありません。特に“異動する公務員”になってからは、文字通り移動する機会が多く、仕事の忙しさも相まって常に気が散っている状態だったのだと思います。だから、ふと我に返ったときに自分がいかに集中できていたのかに驚きました。


—なるほど、特に毎日忙しくされている方にとっては貴重な機会になりそうですね。


 そうですね。組織においてリーダーの役目を担っている人はすごく忙しいし、意思決定の数も段違いだと思います。普段はそういう方に向けてウェルビーイングの重要性をお伝えする機会が多いのですが、自分自身に視点を移すと、そういう時間が全く取れていなかったことに気づきました。

 「沖縄の海辺」という日々の喧騒から離れた場所に身を置いて、仕事もスマホに来る通知も、全部手放して馬と向き合う。そんな風に全力で何かに向き合った記憶は実はここ数年ほとんどないので、とてもいい機会をいただいたと思っています。

 

 



「 "遊びに行きたい場所"ではなく"帰りたい場所"が増えた 」

 

—そのほかに、リトリートだからこそできた経験はありますか?


 一緒にいた仲間の新しい一面を発見できたのも、リトリートだったからこそだと思っています。そう思えたのは、ホースセラピーのあとに、一緒に参加した仲間と感想をシェアしあったとき。

 単純に、難しかった、楽しかった、この感覚忘れてた…と感じたことを素直に場に出せたのはもちろん、「これは絶対職場でも生きるよね」といった話もできました。「タクちゃんあんなに真剣な顔できるんだね、格好良かったよ」と笑われたりもして(笑)。

 コロナ禍によって、社会のありようには大きな変化がありました。身近なことを挙げると、目の前にいても話してはいけないとか、対話や会話を控えるようにとか…。だからこそ、広い馬場の中で、互いのいろんな面を見られる経験はとても大切だと感じています。この体験は、”もっとも必要だけれど、なかなか実現しえない”、人材育成の研修のひとつとしても有効なのではないでしょうか。

 

—リトリートでの2日間を終えて、東京に戻られた吉弘さん。ご自身に起きた変化などはあったのでしょうか?


 馬と心を通じ合わせようと思うと、自分の「こうしてほしい」という思いを全力で馬に伝える必要があるんです。そのためには、自分が心から「そうしてほしい」と思っていなければなりません。自分の願いに向き合って、それを心から伝える。馬とのその体験が「自分のやっていきたいこと」に向き合うきっかけになりました。

 正直、最近の仕事には、自分の中で目的が明確にならないままにやっていたものもある気もするんですよね。だけどリトリートに参加して、自分のやりたいことは何なの?という問いに全力で向き合えるようになりました。

 結果的に、自分の本当にやりたいことに意識が向くようになり、何かに取り組んでいる最中に余計なことを考えることも少なくなりました。集中するってウェルビーイングなんだ、という気づきにもなりましたね。


—最後に、リトリートに興味がある人にメッセージをお願いします。


 僕は最近よく「また沖縄に行きたい」ではなく、「早く沖縄に帰りたい」という思いに駆られます。それは、リトリートでの体験が本当に豊かで、本当の自分に戻れたようなあの感覚を、忘れないうちにもう一度体験したいと思うからです。

 目の前の仕事に追われ、自分のこと考える時間が無い人にこそ、リトリートに訪れて自分の心の内に触れられる機会を作ってみてほしいですね。僕も、あの感覚を忘れないうちにまた沖縄に帰って、もっともっと自己を深掘りしていきたいと思っています。

 

 

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