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身体感覚を伴うからこそ得られるものがある。経営者・プロコーチの菊池 達郎が語るホースコーチングの魅力

ホースコーチングを通して見つめたセルフリーダーシップをきっかけに、慣れ親しんだ湘南の地を離れ沖縄県南城市に移住を決めた人がいます。それが、Be Coaching 株式会社代表・菊池達郎(きくち たつお)さんです。


菊池さんは、大学卒業後すぐにコーチングで起業を果たし、14年もの間プロコーチとして活動してきました。そんな「コーチングに精通した人」ともいえる菊池さんが、ホースコーチングに魅了され、住む場所さえ移し、ご自身のクライアントさんを馬場に連れてくるようになった理由はなんだったのでしょうか。話を聞きました。




菊池 達郎(きくち たつお)

1987年9月 東京生まれ。大学卒業後プロコーチとして独立、Be Coaching 株式会社を起業。2011年、東日本大震災をきっかけに「生きたい人生を生きよう」と決心し、神奈川・湘南に移住。茅ヶ崎サザンビーチの近くで、妻・息子・猫・犬と約10年を過ごす。2022年、沖縄の大自然に心惹かれ移住を決意。南城市で代表取締役社長、QOLコーチング

トレーナー、コピーライターとしての活動、リトリート施設の貸し出しなどを行う。著書に『元・偏差値36のプロコーチが教える成功とメンターの本当の話 「あなたの悩みはすべてメンターの仕業だった!」』

 

 

「本当にやりたいことをやる」大学卒業後にスタートしたコーチとしての道


――はじめに、菊池さんのこれまでのご経歴を教えてください。


今は、Be Coaching 株式会社の代表、QOLコーチングトレーナー、コピーライターとして活動しています。


コーチングの道を志したのは大学生のとき。当時は学校の先生になろうと思って大学に通っていて、教育の手法のひとつとしてコーチングを学んでいました。学んだことを生かそうとアルバイト先や教育実習先でコーチングを活用してみたら、成果が出たんです。それで「コーチングっていいな」と自分の中にコーチとして生きる選択肢が生まれました。


――卒業後すぐに独立することに不安はありませんでしたか?


社会のことを何も知らなかったからできたんだと思います。仮に今僕が学校の先生をしていてコーチングで起業しようとなっても、できる気がしませんから(笑)。


ただ、独立を決める前にメンターのような存在の人に相談はしていました。当時の自分には「学校の先生になる」「アルバイトをしていた外資系のアパレル企業で正社員になる」「コーチングで起業する」の3つの道があったので、「どれを選ぶべきでしょうか?」と。するとメンターは「多くの人は安定とか肩書とかを気にしながら、本当にやりたいことをできずに死んでいくんだよ」と話してくれたんです。


それを聞いた瞬間「本当にやりたいことをやろう」と心が決まり、起業。それから14年、今も変わらずコーチとして仕事を続けています。

 

 

馬との触れ合いは“初めて会う子どもと遊ぶときのように”


――ホースコーチングに参加したきっかけを教えてください。


このプログラムを主催する矢澤さんに、すごくカジュアルな感じで「こんなんあるから来ない?」と声をかけていただいたのがきっかけでした。僕はフットワーク軽く物事に取り組むのが好きなタイプなので「声をかけてもらったってことはきっと適したタイミングなんだろう」と思って参加を決めました。そのころちょうど沖縄への移住も考えていたタイミングだったので、視察も兼ねていい機会かなと思って。


――ホースコーチングではどんなことに取り組みましたか?


僕含めて6人が参加していて、終日3名ずつに別れてのセッションを行いました。まずは馬と信頼関係を作るために、この時間をどうやって過ごすかを各々考える時間がありました。その後、ブラッシングをしたり、馬場を一緒に歩いたりして、最後に馬を引きながら海岸を歩いてまた馬場に戻ってくるというプログラムでした。

 



――「最初は苦戦した」という声を聞くことが多いホースコーチングですが、菊池さんはいかがでしたか?


僕の場合は、仲良くなれなかった・苦戦したということはありませんでしたね。初めて会う子どもと一緒に遊ぶ感覚に近かったかな。


――初めて会う子ども?


そうです。たとえば友人のお子さん、それも初めて会うお子さんを1日お預かりすることになったとするじゃないですか。その場合僕は、いきなり「何して遊ぶ?」「何が好き?」って話しかけるんじゃなくて、その子がどういうことが好きなのか、どう関わったらお互いが楽しいかを、その子の様子を見ながらまずは考えるようにしているんです。今回も、どうしたらこの子(馬)が喜んでくれるかな、一緒に楽しめるかなと考える時間はありましたが、苦戦したという印象はありませんでした。


もしかすると、もともと馬になじみがあったことも影響しているかもしれません。子どもが乗馬をやっていて毎月馬と触れ合っているので「うわ!初めて見た!」という感じではなくて。ホースコーチングで触れ合った宮古馬は普段触れ合っている馬よりも小柄だったので、単純に「かわいいな」という気持ちの方が大きかったように思います。


――ホースコーチングの中で印象的だった出来事はありますか?


僕の中でのホースコーチングのテーマは「リーダーシップ」でした。今の会社には他に社員はいないので、当然僕に何かを言ってくれる人っていないんですよね。もっとこうした方がいいよとアドバイスしてくれる人もいなければ、逆に困ったときに相談する相手もいない。


これまでは基本的に内省をしてどうにかやってきていたんですが、初めてホースコーチングに参加した時期は、仕事の面でも生活の面でも「これからどうしようかな」と考えることがとても多かったんです。これをやるとどんな影響が出るんだろう、本当に大丈夫なのかなと決めきれないことがたくさんありました。


ですが、リーダーシップをテーマに馬と触れ合っているうち、「あなたはリーダーなんだから、それを自覚しなさい」と言われているような気がしてきたんです。結局は自分が自分に言っているだけなのかもしれませんが、そう思い込もうという感覚ではなくて、本当に、彼からその言葉をもらったみたいな不思議な感覚でした。「僕は自分がすることには自分で責任を持てるんだから大丈夫」という強い気持ちが湧いてきた…いや、思い出した感じがしましたね。


ホースコーチングでのこの体験が、10年暮らした湘南を離れて沖縄県南城市に移住するきっかけのひとつにもなりました。

 

 

南城に呼ばれ、湘南からの移住を決心


――慣れ親しんだ湘南の地から、沖縄県南城市への移住。とても大きな決断のように思えます。


そうですね。ただもともと夫婦ともに沖縄が大好きで、いつか移住したいとは頭の片隅で思っていたので、それがたまたまこのタイミングになっただけのような気もしています。


――移住の決め手になったことはあったのでしょうか?


正直、2022年の春ごろまでは、湘南の暮らしにまったく不満がなかったんです。寒いのが嫌いだから、冬になると潮風が寒すぎる!くらいのもので(笑)。でもある日を境に突然、「湘南の暮らしって、未来が想像できちゃうな」と思ってしまって。


こういう風に年をとって、こういう暮らしをして、こんな未来がやってくるんだろうな…と想像できてしまった瞬間に、湘南での暮らしがすごくつまらなくなってしまったんです。想像できる未来を生きていくの、いやだな、と。そうなると気持ちがどこかに行ってしまって、月に2回ほどのペースで沖縄に来て、矢澤さんが勧めてくれた南部のエリアを中心に住みたい場所を探し続ける日々がやってきました。


でもなかなか南城市には理想のおうちがなくて、諦めかけていたころに不動産屋さんが「冗談だと思って見に行ってみますか?」と連れて行ってくれたのが今住んでいる古民家。すごく“気が良い”感じがして気に入りましたし、「本当に南城に呼ばれているならきっとぴったりな場所が迎えてくれるだろう」と思っていたので、このおうちが見つかったことで移住しない理由がなくなったんですよね。


――素敵ですね。まさに「南城が迎えてくれた」エピソードのように思えます。


本当ですよね。実は湘南で暮らしていた最後のころは毎日が苦痛でした。10年前、心から望んで手に入れた暮らしだったはずなのに「今日まだも湘南にいる」と思ってしまっていたくらいでした。南城での古民家暮らしにも、家の改修とか虫問題とか課題はいろいろありますが、そういうのも含めて本当に幸せな日々を送っています。


矢澤さんとの関わり、ホースコーチングでの馬との対話、南城市との出会い…すべてがつながって今がある気がするので、本当に不思議です。

 

 

「気づく力」の高い人ほど、ホースコーチングでの気づきは深く大きくなる


――菊池さんは、ご自身の古民家の離れをリトリート施設として貸し出しています。なぜそのような取り組みを?


かつての僕のように、次のステップに進むためにひとりで内省をしたい、全国各地を旅してみたいという方って意外と多いんじゃないかと思います。そのときにネックになるのがお金ですよね。


人生の岐路にいる方は、学生さんだったり、転職活動中でお金が使えない方だったりすることが多い。お金が足枷になって挑戦できないのは本当にもったいないことだと思うので、住むだけだったら無料でどうぞと貸し出しています。ここで暮らしながらいろんなことに気づき、帰って新しいことにチャレンジし、成長につなげてもらえるのなら、いつでもどうぞ!と思っています。


――古民家貸し出しのほかにも、菊池さんはご自身のコーチングのクライアントを連れて馬場にいらっしゃることもあると聞いています。それはなぜですか?


僕自身、ホースコーチングを通してさまざまな気づきを得ることができました。それを自分のクライアントさんにも体験してほしいですし、シンプルに言えば話すよりやったほうが早いので、興味がある人は連れて来てしまっています(笑)。


ホースコーチングの良さは、誰かに何かを言われて気づくのではなく、馬を通して自分で気づけることだと思っています。もちろんその気づきは人によるコーチングでも起こせますが、ホースコーチングは身体感覚を伴うので、ただ対話するときに比べると、動きの中で気づけることが多いんです。


たとえば馬に対して今は遠慮がちに動いてしまっているなとか、攻めすぎてしまっているなとか。その動きを通して自分の思考の癖やパターンに気づける側面が大きい。ただ馬を傍観して「いいこと思いついた!」となることは決してないので、それがすごくいいなと思っています。


――なるほど。身体感覚を伴うからこその気づきがあるんですね。


そうですね。コーチングは、いろんな視点を持って、いろんな角度からアプローチをしていくことが大切です。でも、対人間のコーチングだけだとどうしても限界はあるので、ホースコーチングならではの角度も活用することで、より豊かな時間になると考えています。


僕がホースコーチングにおいてもっともいいなと思っているのが、忖度がないこと。人間だったら「この人頑張ってるし、そろそろ走ってあげようかな」と思ってしまうじゃないですか。でも、相手が馬だとそういう忖度が一切ない。ダメなものはダメだし、良いものは良いという非常にシンプルな反応が返ってきます。


つまり、馬との間で起きることは全部自分の問題、自分のテーマであると思えるんですよね。人との対話では、図星をつかれたり、言い方がひっかかったりしてイラッとすることもあると思います。でも馬は本当に素直な反応を返してくれるから、問題の原因は自分であると認めざるを得ない。そういう貴重な体験になると思います。


――菊池さんは、どんな人にホースコーチングを勧めたいですか?


まずは、迷いや葛藤がある人、何かをやりたいと思っているけどその推進力が足りないと感じている人におすすめしたいです。僕はホースコーチングがセルフリーダーシップを身につけるきっかけのひとつになったので、そのようなニーズにはぴったりなのではないかと思います。


さらににおすすめしたいのは、コーチングを学んでいる人です。すでにコーチングや心理学を学んでいて「気づく力」が高まっている人ほど、深い気づきを得られると思うので、ぜひ一度体験してみてほしいです。

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