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「経営者にこそ訪れてほしい場所」竹あかり演出家・池田親生さんが、自分より大きなものに”乗せてもらって”気づけたこと

「馬にも乗馬にも、全然興味がなかったんですよ」。今回インタビューをした竹あかり演出家・池田 親生(いけだ ちかお)さんは、始めにそう言って笑った。聞けば今回は、知人からの誘いを受け、「この人がそんなに言うならなにか面白い秘密が隠されているはずだ」と、違った方向への興味で参加を決めたのだという。

 

ところがインタビュー中、池田さんが熱量高く発したのは「すべての人にやってみてほしいいい」という言葉だった。本記事では、池田さんが自らの体験から見出した”ホースコーチングの価値”について話を聞いた。

 

池田 親生(いけだ ちかお)

竹あかり演出家/CHIKAKEN共同代表、総務省 地域力創造アドバイザー。「竹あかりを通し世界平和の一翼を担う」べく竹あかり演出チーム「CHIKAKEN」とし 世界中を東奔西走中。明治天皇百年祭、G7伊勢志摩サミット、アメリカネバダ州で行われる バーニングマンでの装飾、演出 等々日本の価値を磨き、世界の希望になる作品を熊本を拠点に制作。「人と人・人とまち・人と自然」を繋ぐ「竹あかり」が、新たな日本の「文化」として受け継がれサスティナブルでピースな世の中になる事を目指し鋭意活動中。



馬と心を通わせるため、頭の回転を1/5に


—はじめに、コースコーチングのプログラムに参加したきっかけを教えてください。


きっかけは、友人の矢澤祐史さんから誘いを受けたこと。矢澤さんとは、「みんなの想火」を始めいろいろなところで一緒に仕事をしていて、あるとき「面白いからおいでよ!」と言われたんです。馬に乗った経験もなかったし、そのときは全然興味もなくて(笑)。でもあの矢澤さんが面白いって言ってるんだからきっとなにかあるんだろうな、じゃあ行きますか!と沖縄行きを決めました。


—馬に関心があったわけではないのですね。


でも僕、嫌いとか面白くないって思うことがあんまりないんですよ。頭のスイッチや視点を変えれば物事は全部面白くなる。誰かが面白がっているってことは、きっと面白い秘密があるはずだと思って、それを探しに行こうと思っていました。でも実際に体験してみたら、想像を超える面白さがあったんですよね。


—なるほど。始めに取り組まれたのはどんなことだったのでしょうか。


現地に着くと、まずはコーチが馬と接するときの心得を教えてくれました。コーチはすごく研ぎ澄まされた感覚を持っていて、合ってすぐの時点で「一人ひとりがどういう状態なのか」を見抜いているんですよね。それをもとにグループ分けをされて、グループごとに今日1日何をするのかを決めてくれました。


僕たちのグループの最初のミッションは「3人で3匹の馬を捕まえること」。さっそく協力して進めていこうと柵の中に入ったんですが、それだけで馬が少し遠ざかってしまったんですよ。それで、「あ、これは苦戦するだろうな」と思っていると、コーチさんが「親生、うるさい!」って言うんですよ。


—「うるさい」?


始まる前に「ここからは非言語で」と言われていたから、人間同士もアイコンタクトだけでコミュニケーションを取っていました。だから、誰も何にも喋っていない。うるさいはずないんです。それなのに「うるさい」。


僕は、マインドフルネスのように何も考えない状態に意識的に持っていくのは得意な方なんです。それでも、いつもと違う環境の中で「どうやったらうまくいくだろう」と考えてしまっていたし、無意識でしたが頭のどこかで仕事のことを思い浮かべたりもしてしまっていたんでしょうね。


でもそのあとでコーチが「頭の回転を1/5にして」と具体的な指示をくれて、「そういうこと!」と理解できました。本当に1/5にしたら直後に三頭の馬たちが寄ってきて僕に頭をすりすりしてきたんですよ。そのあとはすごくスムーズで、馬の口元に手綱をつけるミッションもすぐにクリアできました。



「自分より力の大きな存在に”乗せてもらっている”」ということを思い出せる場所


—プログラムの中で印象的だったことはありますか?


さきほどの「頭の中を1/5に」という指示もそうですが、プログラム全体を通して感じたのは、コーチは「この人にはこの言い方をすれば伝わる」というのを直感的にわかっているんだな、ということです。これってきっとノウハウではなく、ものすごく感覚を研ぎ澄まして向き合ってくれているからできることですよね。コーチのその力を、純粋にすごく面白いと感じました。


それから、コーチの言うことを「聞かなければいけない」環境というのも特別で、印象的でしたね。


—どういうことでしょうか?


たぶん僕は、馬なしでいきなりコーチが現れたらあんまり彼女の言うことを聞かないと思うんですよ。この人、何言ってるんだろう?って(笑)。でも、今回のホースプログラムではミスをしたら自分が怪我をしますし、命にかかわる可能性もあります。そういうある種危険な環境があったからこそ、コーチの話を真剣に聞けたし、注意を払って馬に接することができたんじゃないかと思うんですよね。


ビジネスをしていると、話を聞けない人に出会うことがありますよね。経営者が部下の話を聞いてくれないとか、逆に部下が上司の言うことを全く聞けないというケースもあると思います。それはなぜかと考えると、その人たちが本当に危険な状態にないから。


だからたとえば、今回のようにあえて危険な場に上司と部下が一緒に訪れることで、互いの言うことをちゃんと聞けるようになるし、伝わる方法で伝えるようにもなるんじゃないかと思ったんです。


—なるほど。たしかに普段の生活で、「話をちゃんと聞かなければ危ない」という場面はなかなかありませんよね。


そうですね。馬は人間より圧倒的に大きな存在である上、言葉も通じない。信頼してるよ、僕は敵ではないよと全身全霊で心から伝えなければ安全に乗せてもらえないし、動いてもくれません。でもよく考えたら、これって馬だけの話ではないんですよね。


経営者は忘れてしまいがちだと思いますが、会社という組織は複数名の社員がいる組織です。それって、自分よりもエネルギーの大きな存在であるはずで、経営者はあくまでもその大きなエネルギー体に”乗せてもらって”目的を達成していっているはずなんです。それなのに、部下を自分よりも力の弱い存在として抑圧したり、物のように扱ってしまったりする。結果的に、会社全体が動かなくなってしまうということが起きるのではないでしょうか。


自分が日頃から、いかに大きなものに乗せてもらって生きているのか。相手に対してどのように敬意をもって振舞うべきなのか。ホースコーチングは、それを思い出させてくれる場のように感じました。経営者にこそ訪れてほしいですし、リーダー研修などに取り入れても特効果を発揮するように思いますね。

 

 

相手に対して敬意を払う。それがコミュニケーションの基本の形


—ホースコーチングに参加したからこそ気づけたことはありましたか?


参加して気づいたというよりも、改めて感じたことに近いのですが、すべての人をリスペクトをする姿勢はこれからも大切にしていきたいと思えました。


ホースコーチングに参加するほとんどすべての方は、馬術を身につけていないと思います。技術がなければ、「こっちに動いて」とちょっと思っただけでは馬は動いてくれません。あっちへ行きたい!一体になって動いてほしい!そんな強い気持ちと、馬への敬意がなければ絶対に思うように動かすことはできないんです。


人間も同じで、命令すればコントロールできるなんて単純なものではないですよね。何かをしてほしければ、リスペクトを払ったうえで、伝わるようにきちんと伝える。わかりあうために、相手の話をちゃんと聞く。そういう相手に対しての敬意がよりよい組織を作っていくはずです。ホースコーチングを通して、改めてそのことに気づけるのではないでしょうか。


—最後に、ホースコーチングに興味がある方へメッセージをお願いします。


端的ですが、すべての人に体験してみてほしいですね。馬に乗るのにはもちろん危険が伴いますが、「なんとかしなければならない」と本気で何かに向き合う機会は日常生活の中ではあまりないからこそ、あえて「危機的な状況」に飛び込むことで得られるものも大きいのではないでしょうか。


コーチの指導のもと、馬との触れ合いを体験してみてください。きっと、多くの人が気づきを得られるはずです。

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